ドラマ版 『極主夫道』をつまらないと感じた理由

はじめまして
今回はタイトルにもあるようにドラマ版極主夫道について私が感じたことを書いていこうと思います。

※初投稿につき至らないところはあると思いますがご了承ください。
※ドラマ版極主夫道のネタバレがございますのでご注意ください。
※ドラマ出演者様やそのファンの皆様、また純粋にドラマを楽しめた方を否定するような意図は一切ございません。あくまでも一意見であることをご理解頂けますようお願いします。


1.はじめに

私は極主夫道の原作漫画を全巻揃えて読んでいる1ファンです。YouTubeにて津田健次郎さん、鈴村健一さん、細谷佳正さん、木村昴さんがアフレコしたプロモーションビデオが公開された時は「思ってた通りの声だ!」と感動しましたし、津田健次郎さんが実写で出演したプロモーションビデオでも龍そのものでとても感動しました。

そんな中、極主夫道が実写ドラマ化すると言うニュース。主演は玉木宏さん。この時点で「津田健次郎さんの龍は越えられない」等の声もありましたが、私はまだこの段階では、「好きな漫画が玉木宏さん主演で実写化される」という単純に楽しみが6割程度、不安が4割程ありました。



2.『極主夫道』を実写化するにあたって

極主夫道を実写化する上で疑問に思ったことは大きく2つありました。

①1話読み切り形式の漫画をドラマの尺(1時間)でどのように構成するのか
②原作が完結していない作品でドラマの結末をどこにもっていくのか

極主夫道は、元極道の龍が専業主夫として家事をしたり地域貢献したりするシュールな姿を1話読み切りの連載スタイルでテンポ良く読めることがこの作品の面白いところだと思っています。ですが、ドラマとなると話は違います。1時間という長い尺の中に1つの「主軸」が必要となり、その軸に合わせて起・承・転・結で構成しなければなりません。なので、原作の1話1話を繋ぎ合わせるだけではいけません。

さらに、先述したように原作はまだ完結していないため、終わりらしい終わり方もなんとかして作らなくてはなりません。この時点でドラマオリジナル要素が入ることは120%確定した訳です。
しかし、私はオリジナル要素が悪いとは思えません。むしろこの作風上仕方ないことだと言えます。大事なのは、いかに原作の雰囲気を崩さずオリジナル要素を入れることだと思っています。

追加キャストとして美久役に川口 春奈さん、雅役に志尊 淳さん等豪華なキャスト陣が発表される中、ドラマ極主夫道についてこんな続報が入ってきました。

“不死身の龍”玉木宏の娘役に話題の子役・白鳥玉季 『極主夫道』親子3ショットが解禁

ええ………

ドラマオリジナル要素が入るのは覚悟していましたが、まさか娘がいる設定を出すとは……
この時点で離脱した人も多かったと思います。正直私もどうなの?と思ったのですが、まぁ上手く調理してくれるだろう軽くと思い、そんな中ドラマの放送が始まりました。1話から最終話まで見ました。

正直言います。

クソでした。

以下、その理由を述べていきます。



3.ドラマ『極主夫道』のここが良くない

まず、原作からドラマの主な変更点やオリジナル要素を挙げたいと思います。

・龍、美玖夫妻に娘・ひまわりがいる

・龍、美玖、ひまわりの家がアパートから一軒家に

・酉井雲雀がライバルの組の姐さんではなく龍がいた組の姐さんに。それに伴い龍の組の組長の妻という設定になった。

・原作では1巻1話等に出てくる警官役の1人、酒井タツキ(演-古川 雄大氏)が原作のオタクの人を兼ねている

・ドラマオリジナルキャラクターとして主要人物行きつけの喫茶店の店長 遠野 誠(演-水橋 研二氏)、喫茶店店員 大前 ゆかり(演-玉城 ティナ氏)が登場

・龍たちがいる自治体の婦人会の会長のキャラが濃いめに

ざっとこんな感じですかね。(なにか忘れてたらすみません)

これくらいの変更点やオリジナル要素を受け入れられるかどうかは個人差があると思います。

第1話放送終了の段階で、原作1巻第7話97ページの亮太くんばりに「思ってたのと違う!」となって離脱した人も結構いたようですね。

正直、このドラマの良くない点を挙げたらキリがないのですが、その中でも特に良くないと思ったところを挙げていきたいと思います。

①キャラ崩壊
先述したとおり、私は実写化に際してオリジナル要素を入れることに対してそこまで否定的ではありません。しかし、オリジナル要素があまりにも原作やキャラにリスペクトがなかったり、作品の世界観に合っていなかったりすれば別です。
ひどいキャラ崩壊という点に関してはこれまた挙げたらキリがないので、個人的に特にひどいと感じたキャラを挙げます。

・雅
龍の元舎弟で、組が解散した後はぐうたら過ごしている人ですね。少し小生意気な所もあるけど決して悪いヤツではないです。
しかし、今回のドラマで無神経な空気読めないヤツみたいな扱いにされてたのが悲しかったです。
具体的に言うと、ドラマ第8話で別の町の婦人会会長、福田(演-石田 ひかり氏)に和菓子作りを教わっているシーンです。
言うまでもないですが、福田もドラマオリジナルキャラですね。
福田は、以前は現在龍たちが住んでいる町で暮らしていましたが、離婚し、引っ越したという設定があります。その際、雅が「どうして引っ越したんですか!?」「なんで離婚したんですか!?」と福田を質問攻めにします。
正直、雅という役の概念を捨てても人の家庭事情に首つっこんでくるのはあまりにも無神経すぎます。原作の雅は確かに小生意気なところはありますが、こんな無神経な人物ではありません。一応そのシーンの雅は悪気がないように見えますが、悪気がなかったらなかったでかえってタチが悪いです。
どうして、雅をこんな無神経でデリカシーのない男にしたのか理解に苦しみます。

・美久
美玖は雅のような性格の改悪こそありません。しかし、娘のひまわりが絡んでくることにより、イマイチ原作と噛み合わないのです。
美玖の娘、ひまわりは美久が学生時代に交際していた相手との子どもです。学生時代に妊娠してしまい、相手には逃げられてしまいましたが、美玖は産んで育てることを決意します。

は?

勘違いしないでほしいのですが、私は学生時代に妊娠してしまったことや、1人になっても子どもを産み育てることに対して否定するわけではありません。むしろとても立派なことだと思います。
しかし、それらはあまりにも「美久」というキャラクター像からかけ離れてしまっている。わざわざ美久でやらなくてもいいのでは?と思いました。


②脚本の引き出しの少なさ
このドラマ、極主夫道という概念を消し去っても面白くないです。というのも、あまりにも「勘違い」で物語を動かすことが多すぎる。以下、該当する話と概要を簡潔にまとめます。

・第1話 龍が所属していた天雀会のメンツが大城山組との抗争のため河原に向かうがそれは勘違い。実際は婦人会会長の娘のお誕生日パーティだった。

・第2話 「戦場に行く」と言った龍に雅は喧嘩だと思ってついて行くがそれは勘違い。実際はバーゲンセールだった。

・第3話 逃走犯が学校に侵入しハロウィンのお芝居用の仮装でやり過ごそうとするが、雅だと勘違いした龍が逃走犯と一緒に芝居をしようとする。

・第5話 美久の回想にて、「血痕」と「結婚」を勘違いする。そして龍と結婚する。

・第6話 ゆかりに近づく男を雅が元カレだと勘違い。

・第7話 龍と酒井がアニメのフィギュアを手に入れるための作戦会議を酒井の上司、佐渡島(演-安井順平氏)が''黒い交際''と勘違い。

・第8話 ライバルスイーツ店の店長、リサの父親が龍が所属していた天雀会の組長かと思われたが勘違いだった。

・第10話 ・ひまわりが誘拐されたと勘違い
・龍が余命2ヶ月と宣告されるがそれは
婦人会会長の勘違いだった。

はい。

ほぼ全部です。

もしかしたら私が取りこぼしているだけで4話と9話にもあったかもしれません。(あったら教えてください)

10話中8話に勘違いに関するエピソードがあり、さらに半数近くが物語の核心を左右するエピソード(起承転結の転や結)になります。

ここまでワンパターンだともはや展開になんの面白味がありません。第9話の後、最終回の予告で堂々と「龍、余命2ヶ月!?」などと謳っていましたが、正直また勘違いなんだろうなと思い、ワクワクもドキドキもしませんでした。


③娘の存在
先述した通り、娘ひまわりは望んだ妊娠で産まれた子どもではなかったのかもしれません。だからと言って、あまりにも落ち着き過ぎているのがなんだか違和感ありありで仕方ありませんでした。
天真爛漫な美久が母親であんな冷静沈着な娘になる……?それとも最近の小学生ってみんなあんな感じなの……?

物語終盤、ひまわりが龍が自分に気をつかっているんじゃないかと感じて周囲の大人の協力も仰ぎ嘘の誘拐事件を画策します。そこでなんやかんやありましたが、龍が命懸けで助けに来てくれて、家族愛に気づきましたとさ。

うーん

おそらく、制作陣はこれをやりたかったんだと思います。逆に言うとこれのためだけに娘という設定を作ったようにしか思えないのです。あまりにも他の話でひまわりの出番が無さすぎるのです。強いて言えば龍がPTAに入会する話くらいですが、これも流石に制作陣も娘の影のうすさに気づいたのかやっつけ仕事感が否めなかったです。
そう考えると、前述のひまわりの人物像のチグハグさもなんとなく辻褄が合うような気がします。


④極主夫道に感動を求めさせるな
先述したように、極主夫道の面白さは元極道のいかにもな感じの男性が専業主婦として家事・地域貢献・買い物をするシュールさが笑えるところです。

極主夫道はギャグ漫画なのです。

ドラマ版だと、各話終盤にやれ家族の絆だの、人と人との繋がりだの訴えかけるようなシーンが多いです。もちろん私はそういう話好きですし、涙腺弱いのでポロッときてしまいます。
でも、極主夫道ではそういうの求めてないんですよね。
肝心の笑えるシュールなシーンも終盤の感動ストーリーのための過程として描かれててなんか違うと思いました。


4.良かったところ
ここまで散々悪いところを言ってしまったので、良いところも挙げていきます。
まず、主演の玉木宏さん始め、役者陣の演技は大変素晴らしかったと思います。玉木宏さんがヤクザの役をやっているところは初めて見たのですが、迫力があってびっくりしました。アウトレイジとかの世界にいても違和感ないと思います。

この手の実写化って、どうしても出演俳優陣のコスプレ感がすごくなってしまうのですが、そこは制作陣側がいい感じに改変して見事に現実(実写)に落とし込めてると思います。

あと、原作に沿ったエピソードは面白かったです。(これに関しては原作が面白いだけですが…)

主題歌もかなり好きな方です。ギャグ漫画の極主夫道には合わないかもしれませんが、家族愛をテーマにしたこのドラマには合ってたんじゃないかと思います。



5.極主夫道の評判
ここまで私はドラマ極主夫道に対して批判的な意見を述べてきましたが、実際の世間一般での評価はどんなものなのでしょうか。

最終回の視聴率は9.7%

この数字をどう捉えるでしょうか。私は悪くはない数字だと思っています。Twitterでも実況ツイートや感想ツイートなどで「極主夫道」がトレンドの上位に上がることもありましたしね。
勝手ながら、感想ツイートをあげている人のプロフィールを数人程拝見させていただくと、原作の極主夫道を知らなそう、または普段漫画とか読んでなさそうだな、という印象をもちました。
この結果について、あくまでも独断と偏見による私の考察になるのですが、

ドラマ序盤で原作ファンの大半が離脱

原作を知らない人たちが笑って泣けるホームコメディ「極主夫道」を見続けた

という感じではないでしょうか。
決して、原作を知らないのが悪い訳ではありませんし、楽しみ方もそれぞれです。原作を知らない人は是非原作も読んで欲しいと思っています。

5.最後に
ここまで読んで下さった皆さんの中には「何でこのタイミングで極主夫道のドラマの話を?」と思った方も少なくないのではないでしょうか

それは、現在テレビ東京にて『おじさまと猫』の実写ドラマをやっているからです。
おじさまと猫と極主夫道では作風も違いますし、まだ放送も始まったばかりで1話の尺も違うので一様に比較するのもアレですが、極端の原作改変やキャラ変などもなく、ドラマオリジナルのストーリー展開も全く違和感ない作品だと感じております。強いて言えば主人公の猫、ふくまるの作り物感が拭いきれない事でしょうか。
なので、「猫のクオリティが低い」という理由で批判している人がいたら擁護したくなる作品ではあるのです。
同時に、なんで極主夫道はこうできなかったのかと思ったのがこの記事を書くきっかけでもありました。

一方で、先述したようにドラマ『極主夫道』は世間一般的には悪くは無い評価だったと考えられます。
つまり、ドラマ版極主夫道 第2シーズンが制作される可能性もなきにしもあらずなのでは?と思います。
もし、もしドラマ 極主夫道の制作陣の方がこのブログを見てくださっているのなら少しはこの声が届いてほしいと思うばかりです。



ここまで読んでいただきありがとうございました。